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【読書感想】田井ノエル『転生義経は静かに暮らしたい』

【読書感想】田井ノエル『転生義経は静かに暮らしたい』2022年3月25日

普段読まないジャンルの本を読んでみました。現代の女子高生が主人公ですが、実は前世(源義経)の記憶を持っていて、しかも同じく、前世が弁慶という教師や、静御前だという男子高校生にも出会ってしまい……というおもしろい設定です。
義経といえば中世から現代に至るまで物語の題材として超人気の、誰もが知るスーパーヒーロー。もう小説も書かれ尽くしたんじゃないかというぐらいたくさん出版されています。北条義時源頼家・実朝とその周辺にスポットを当てた歴史小説が、今年の大河ドラマに便乗して出版&再刷されていますが、義経小説はそんなにプッシュされている印象はありません。義経レベルともなると、いまさら便乗することもない、という貫録すら見えるようです。
そんななかで、とうとう義経も転生したかーーーーーと、タイトルに一瞬で惹きつけられました。最近流行の説明口調で長いタイトルにはちょっと苦手意識があったのですが、一見して内容がわかるというのはメリットですね。

全体的に漫画を読むような気軽さで、スイスイと読めました。(実際、一晩で読んでしまいました。)
キャラクターたちも個性的でおもしろいです。静御前の解釈はちょっと珍しくて新鮮に感じました。
そして中盤から物語の核心が見え始め、意外な方向に向かっていきます。ミスリードが上手くて、これってこういうことなんじゃ?と思ったものは全部外れました笑 作者の手のひらの上で転がされた気分です。タイトルとあらすじから想像したのとはちょっと違った、意外な展開に存分に驚かされ、最後までのめり込んで一気読みしてしまいました。

好きポイントとしては、義経の正妻・郷御前にかなりスポットが当たっていたこと。義経を愛した女性と言えば静御前が有名ですが(お恥ずかしながら、私も静御前しか知りませんでした…)、最期の瞬間まで義経の傍に連れ添った郷御前、もっと注目されてほしい……と、この小説を読んで思いました。
作者の後書きがなかったのが残念です。郷御前にこれだけ注目した想いや、着想のきっかけなど、作者が語ってくれるページを最後に読めたら良かったなと思いました。