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読書感想など

【読書感想】辻村深月『サクラ咲く』

【読書感想】辻村深月『サクラ咲く』2014年3月20日

3つのお話からなる連作短編集。奥付を見て知ったのですが、最初の2編は進研ゼミで初出だとか。それも納得の、みずみずしい、青春の詰まった一冊でした。

3編はどれも、わかるひとにはわかる、ぐらいの絶妙なつながりで、そのつながりに気づいたときの、何とも言えないニヤニヤ感。連作短編の醍醐味のひとつだなあと思います。
ひとつひとつは独立したお話になっているので、それだけでも十分楽しめます。が、私が感じたのは、どれも「地味」な子と「派手」な子の話だったなあということ。
地味な子をなんとなく敬遠していたり、派手な子に苦手意識があったり、逆に憧れがあったり、そちら側に行ってみようと頑張ったり、はたまた何も気にしていなかったり。
自分とはタイプの違う子との関わりを避けられないのが学校。でもちゃんと話してみたら意外と仲良くなれたり、お互いに影響し合えたり、新しい価値観に気づけたりもする。そんなことが私にもあったなような……なかったような……。
学生時代ははるか昔に過ぎた私なので懐かしさを感じながら読みましたが、現役の中高生時代に読んでいたら、また感じ方が違ったかなと思います。もっともっと深くに刺さって、何か変わっていたかもしれない。それとも、変えようと思っても変われない自分を嫌になっていたでしょうか。そんなうまくいくわけないじゃんと、ひねくれた気持ちで一笑して終わりにしてしまったかもしれません。
あの頃出会いたかったと思うと同時に、私はやっぱり、いま出会うのが正解だったとも思う。そんなお話でした。

ところで、辻村深月さんの著作は他には『ツナグ』と『嚙みあわない会話と、ある過去について』を読んだだけなのですが、このひとなら外さない、みたいな信頼感を持っています。(世代なのでしょうか?)
実は『サクラ咲く』を手に取ったのも、出先で持っていた本を読み終わってしまい、帰りの電車で読む本を急遽探しに行ったときでした。そう都合良く「これぞ」という本に出会えるはずもなく、うろうろしていたところ『サクラ咲く』が目に留まりました。最近あまり読んでいなかった、青春モノ。でも辻村深月さんの本なら間違いないだろう、と思い、連れて帰りました。
『ツナグ』は最近、続編が出ましたね。店頭に並んでいるのを見てわーーーっという気持ちになりましたが、そのときは他にほしい本があったのでがまん……。『ツナグ』は学校の図書館で借りて読んで、自分では持っていないので、この機に2冊揃えようかなと画策中です。